『劇場版 空の境界』第5章「矛盾螺旋」を見た。

傑作。劇場版の中では一番のできかも。元々輻輳した原作を解体し、時系列順ではなく、意味付けをして再構成されている。何度も同じシーンのリフレインがあるのが特徴的だ。特に、黒桐が両儀のマンションのドアを開けるシーンが象徴的に使われている。何度も何度も。

動画がまたすばらしい。後半の戦闘シーンだけではなく、前半の動きの少ないシーンでも背景を含めてよく計算されていることがわかる。

原作既読ではないと、一度見ただけではストーリーさえもがよくわからないかもしれない。だが、原作既読者には非常にわかりやすくまたよくできた再構成だった。巴の平凡さが身につまされる。リアルというか、本物と偽物の差異、その意味が問われる。それが二重の意味で再現され、原作者によるある種の回答がなされている。

原作未読の場合でも、何度か見ればきちんと理解できるように作ってはある。劇場で、あるいはDVDで確認するべきアニメーションということだろう。不親切な作りかもしれないが、なにしろ全7章の5作目だ。一見さんはとっくにいないだろうってことなのかな。

アニメーション制作者たちは、原作をそのままただ再現するのではなく、何がその根源かをよく理解した上で、既読者には非常にわかりやすい形で再構成してくれていた。また、熱い話だった。特に、力のない物のそれでも想いの強さをよく描いていた。しかし、気づいたら2時間経っていたって感じ。いやあ、充実した2時間だった。

8.0