妹尾ゆふ子著『魔法の庭』1、2、3を読んだ

『翼の帰る処』でファンになった妹尾ゆふ子の『魔法の庭』1「風人の唄」、2「天界の楽」、3「地上の曲」を読んだ。すでに出版社は倒産しており、現在は古本か図書館で読むしかない。たとえば、amazonでは、2009年9月8日現在、1は1,814円、2が品切れ、3が4,468円から古書で買うことができる。私は、amazonの古書が品切れ巻があることもあって区内在住者ではない人でも借りることができる図書館から借りた。

読んだ感想は、1巻目を読んでいる時は、正直なところ、そこまでして読む本じゃなかったかなあとか、思っていたのだけれど、巻を重ねるにあたって圧倒された。死と再生の物語、とかありきたりの表現が浮かぶが、なんといったらいいのだろう。うまく言葉にすることができない。異なった世界の歴史というか神話を読んでいるようだ。

登場人物がやや類型過ぎる気がしないでもないけれど、それさえもが、なんといったらいいのだろう、集合的無意識から来るっていうか、ある種のパターンゆえの神話性なのかもと思わせてくれる。ちょっと自分でも何を書いているのかよくわからないけれど。

最初は追うのがつらいだけだったぴったり文字の長さを揃えられた詩も、3巻最後ともなれば、ただただ心に染み入るばかりだ。

別の言葉で言えば、他国の軍勢が攻め入った時に、北方王国のイザモルド姫(氷姫)によって凍てつかされた大地。そこへ一度行って戻ってきた南の国を捨てたうたびとアストラと妖魔の王の遍歴の物語だ。物語の緻密さと硬いけれどその美しさに圧倒される。そして、最後のある種のカタルシスも尋常ではない。こういった本に巡りあうと、ああ、世界には私の知らない傑作小説なんて山ほどあるんだろうなあ、と何度も思わされる。唯一の不満っていうか、危惧は、恋愛描写が皆無な点だ。いや、別に必須だとは思わないけれど、『翼の帰る処』でファンになった身としては、一抹の不安を感じてしまうではないか。

1巻 6.0
2巻 7.0
3巻 7.5

シリーズ全体で7.0(サッカー式採点法。10点満点で、5.5〜6.0が平均)