『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』を読んだ

田中ロミオの『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』を読んだ。ある種の人にとってはとても痛い小説かもしれない。ジャンルはなんといったらいいか。ジャンルを明言するとネタバレになるというタイプの小説だ。編集者が作ったであろう帯では一応「学園ラブコメ!?」となっている。厳密に言うと少し違う気もするが、一番近いジャンル分けかもしれない。

青の魔女との出会いによって、高校デビューした主人公の日常が少し変質していく……って。うーん、どう書いてもネタバレになるな。まあ、発売後1ヶ月以上経っていると思うのでそれでもいいかっていう気もするけれど、なんかねえ。せっかくだったら、知らないで読んで欲しい気がする。

まあ、最終的に主人公はラノベ的勝ち組になるのだけれどね(うーん、そうだろうか。冷静になって考えると必ずしもそうとは言えない気もしてくるが、まあ、キモオタ童貞として生きるよりは全然、人としてはいいのかもしれない)。以下、ネタバレ的感想は「続きを読む」から。検索エンジンで来た方はお気の毒。

7.0

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

こういった手法は、前例がないわけじゃない。たぶん、いくらでもあるのだと思う。ただ、ライトのベルではあんまりない。病気かもしれないヒロインよりも、実際に異世界人である方が物語的にはアリだろう。ラノベとしては、まず、そちらの方がいい。かなり違うけれど『電波的な彼女』とかは、数少ない例かもしれない(まあ、あっちの方が能力的にははるかに上なんだろうけれど。こっちはただの精神を病みかけた人にしか見えない)。

読んでいてつらくなっていく話ってのは、ラノベとしてはきついし、よっぽどうまく描かないと売れないだろうと思う。本書では、それがまあ、本当は美少女だったというありがちな(だが、ラノベではあまりないとは思う)オチでうまく、ごまかしている。実際には、ただのキモオタ同士のカップル誕生以上にはなりにくいだろうに。また、人々は、そんなに変な格好の人には注意を向けない。それが危険なことだと十分に認識しているからだろう。だから、少なくとも学校以外を歩いている時には、露骨にさけられることはあっても、陰口を叩かれたりはしないんじゃないかと思う。誰しも狂気にはかかわりたくないだろうし。

本書のうまい点は、最初にいくつかミスリードを仕掛けているので、読者には途中まで、ただの電波少女なのか、実際に彼女が言っている通りの人かが判断しにくい点だろう。注意深く読めば、最初のミスリードではまってさえいなければ、ああ、電波かあ、ってわかる作りにはなっているんだろうけれどね。

痛い小説であると同時にうまい小説でもある。そして普通のラノベでもある。これらがバランスよくかどうかは人によるだろうけれど、うまく書かれていると思う。